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私たちバーテックスが、2026年に日本へ賭ける理由

私たちバーテックスが、2026年に日本へ賭ける理由

バーテックス・ベンチャーズ・ジャパン マネージング・パートナー 冨田 尚史

長い間、世界は日本を「クオリティ」の国として認識してきました。ソニーやトヨタをはじめとする数多くの日本企業は、世界最高水準の精度と職人技、いわゆる「ジャパンクオリティ」を築き上げてきました。これが日本の競争力の源泉であり、差別化の核となってきました。その評価は、今日でも変わらず強いと考えています。

しかし、スタートアップの領域においては、日本はまだそれほど強くありませんでした。その理由について、まず正直にお話ししたいと思います。そのうえで、何が変化しているのか、そしてなぜ私たちバーテックス・ベンチャーズ・ジャパンが、2026年こそ日本のスタートアップ・ファウンダーに本格的な資金を投じるべき時だと考えているのかをご説明します。

日本のスタートアップを阻んできたもの

理由は3つあると考えています。

第一に、日本の企業文化はリスク回避型でした。日本企業は今あるものを守ることを優先します。変化を望まない傾向があり、革新的なアイデアに挑戦することにも消極的でした。これは製造業にとっては強みですが、スタートアップ・エコシステムにとっては弱みです。

第二に、日本では人材の流動性が低いという課題がありました。長期にわたる終身雇用の文化は、社会に安定をもたらしましたが、同時に最も優秀なエンジニアや経営人材を大企業の中に閉じ込めてきました。新しい技術や新しいアイデアのためにスタートアップが人材を求めても、確保することは非常に難しい状況でした。

第三に、長期的な研究開発への投資が不足してきました。日本企業は短期的な利益を重視しすぎ、また大学の研究は商業化への明確な道筋を持っていませんでした。サイエンスはあるのに、サイエンスと市場をつなぐ橋がなかったのです。

「製造業にとってリスク回避は強みですが、スタートアップ・エコシステムにとっては弱みです。」

これら3つの課題は、間違いなく現実のものでした。しかし今、変わりつつあります。

日本を再活性化させる3つの力

私は、日本のスタートアップ・エコシステムを再び活性化させている3つの大きな力があると考えています。

第一は、政府の支援です。2022年、岸田内閣は「スタートアップ創出5カ年計画」を発表しました。2027年までに10万社のスタートアップを創出し、その中から100社のユニコーン企業を生み出すことを目標として、約10兆円規模の公的投資が裏付けとなっています。

これは、日本史上最大のスタートアップ振興策です。ユニコーンの目標達成にはまだ距離があり、現時点で日本のユニコーンは10社ほどです。ただ、Sakana AIはわずか13ヶ月でユニコーンとなり、これは日本史上最速の記録となりました。政策の方向性は今や明確で、超党派の支持を得ています。経済産業省のJ-Startupプログラム、NEDOの約300億円規模のディープテック予算、スタートアップに投資する企業への25%のオープンイノベーション税制も、もはや実験的な施策ではなく、確かなインフラとして機能しています。

第二の力は、大学と産業の連携です。シリコンバレーやシンガポールに見られるように、世界水準の研究とリスクマネーが近接していることは、イノベーション・エコシステムを支える最も重要な条件の一つです。

日本では長らくこの連携が弱い状態が続いていましたが、今ようやく構築されつつあります。東京大学のIPCは4億ドルを超える資金を運用しています。京都大学のiCAPは2026年初頭に、約1.4億ドルの第3号ファンドを設立する予定です。日本の主要大学の約85%が現在、ベンチャーファンドを持っており、10年前の半分以下から大きく増加しました。2025年に大学発スタートアップが調達した資金は、1,978億円に達しています。これは、私たちが長年待ち望んできたパイプラインです。

第三の力は、海外ベンチャーキャピタルの参入です。日本の国内資金は元々豊富ですが、海外資金は異なる価値をもたらします。海外市場へのアクセス、海外の人材、ノウハウ、そしてグローバル・エンタープライズとのつながりです。

「政府の政策、大学のサイエンス、海外資金、そしてファウンダーの野心が、すべて同じ方向へと動いています。」

Andreessen Horowitzは2024年、東京にアジア初の拠点を開設しました。元Sequoia ChinaのHongShanも、2025年2月に東京拠点を開設しています。Eurazeo、Pangaea Ventures、OpenAIも日本に拠点を構えました。グローバルな投資家が日本進出を決めるということは、日本のファウンダーに対する信任投票でもあるのです。

私たちが注力する3つの投資領域

バーテックス・ベンチャーズ・ジャパンでは、日本が世界で勝てると考えている3つの投資領域に注力しています。

  1. DX(デジタル・トランスフォーメーション)

日本はDXにおいて依然として大きなアップサイドを持っています。特に、不動産、金融、病院、流通、人材といった分野です。

日本企業のITシステムの約60%は、20年以上前のレガシーシステムです。経済産業省は、「2025年の崖」と呼ばれるこの状況を放置すれば、年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性があると警告しています。

日本のDX市場は2025年時点で約770億ドル規模であり、2030年までに2,360億ドルへ、年率約25%で成長すると予想されています。この変革を担うのはスタートアップであり、私たちはそれを支援したいと考えています。

  1. ディープテックとAI

第二は、ディープテック、特にAIです。日本のAI市場は2025年時点で約198億ドル規模でしたが、2033年には約1,950億ドルへの成長が見込まれています。

IDCの予測では、日本のAIインフラ投資だけで2026年に55億ドルを超え、これは数年前の7倍の水準です。最もよく知られた例は、2025年11月に26.5億ドルの評価額で1億3,500万ドルを調達したSakana AIです。

Preferred Networksも3,000億円超の評価額を持ち、素材やモビリティの分野で最先端の研究開発を続けています。しかし、私たちが最も期待しているのは、その下の層、つまりロボティクス、素材、量子、ライフサイエンスといった分野の大学発スタートアップです。

「サイエンスはありました。足りなかったのは、それを市場へつなぐ橋でした。」

これらは、世界が今まさに日本に作ってほしいと求めているディープテック企業群です。私たちは大学との深い連携のもとで、こうしたスタートアップを支援していきたいと考えています。

  1. クリエイターエコノミー

第三は、クリエイターエコノミーです。この領域で日本は、他国にはない圧倒的な競争力を持っています。アニメや漫画をはじめとする日本のIPは、世界中で愛されています。

2024年の日本のアニメ市場は3兆8,400億円に達し、前年比15%の成長となりました。2023年の日本のコンテンツ輸出額は5兆8,000億円に達し、これは実は半導体輸出を上回る規模です。

2025年10月に発表された「新クールジャパン戦略」のもと、政府は2033年までに海外コンテンツ売上高20兆円という目標を掲げています。

これは日本が持つ最も価値ある資産の一つであり、私たちはこの上にまだ世界規模で重要な企業がいくつも生まれると考えています。

なぜバーテックスなのか

日本のファウンダーがバーテックスを選ぶべき理由は、私たちのネットワークにあります。

バーテックス・ホールディングスは、東南アジア、シンガポール、インド、中国、イスラエル、米国にグローバル・イノベーション・ハブを持っています。現在300社以上の投資先企業を抱え、これらの市場における主要なグローバル・エンタープライズと強い関係を築いています。

バーテックス・ベンチャーズ・ジャパンは、海外進出を目指す日本のスタートアップにとってのプラットフォームになることを目指しています。

私たちは2024年、バーテックス・ホールディングスをアンカーとする100億円規模の第1号ファンドを設立し、2025年3月にファースト・クローズを完了しました。

バーテックスのエコシステムに参加していただくことで、日本のファウンダーは私たちのグローバル・ネットワークを活用し、海外市場への参入や海外でのプレゼンス向上を実現することができます。これこそ多くの日本のスタートアップに欠けていたピースであり、私たちはそれを提供するためにここにいます。

なぜ2026年なのか

長い間、日本にはサイエンスも、エンジニアリングも、人材もありましたが、スタートアップのための適切な環境がありませんでした。

今、その環境がすべて同時に整いつつあります。政府の政策、大学のサイエンス、海外資金、そしてファウンダーの野心が、すべて同じ方向へと動いています。このような重なりは、めったにありません。

私の考えでは、今こそ日本に賭けるべき時です。

「ソニーやトヨタが築いた日本は、クオリティで知られていました。次の日本は、グローバルな野心で知られることになるでしょう。」

ソニーやトヨタが築いた日本は、クオリティで知られていました。次の日本は、それ以上のもの、つまり、最初からグローバルな野心を持って新しい会社を作っていくという意志で、知られることになるでしょう。

それが、私たちバーテックス・ベンチャーズ・ジャパンが信じる日本であり、2026年、私たちが資金を投じる日本なのです。


冨田 尚史はバーテックス・ベンチャーズ・ジャパンのマネージング・パートナーです。バーテックス・ベンチャーズ・ジャパンは、バーテックス・プラットフォームを構成するネットワーク・ファンドの一つです。